ちょっと思い出しただけ
作品情報
クリープハイプの曲「Night on the Planet」にインスパイアされた松居大悟監督が脚本を手掛け、池松壮亮と伊藤沙莉を主演に映画化。2022年2月11日に公開。怪我で夢を諦めた元ダンサーの男とタクシードライバーの女の6年間に及ぶ恋愛模様を、7月26日の1日を通して描く。
あらすじ
2021年7月26日に34回目の誕生日を迎えた男。ステージの照明の仕事をしている彼は、いつものように仕事に向かう。一方、元恋人の女はタクシー運転手をしており、客を降ろした先に彼の姿を見つける。2人は、各年の7月26日を遡りながら、共に過ごした6年間を思い出していく…
勝手な解説と感想(ネタバレ含みます)
この映画は、作品情報でも述べたように、松居監督が、クリープハイプの曲「Night on the Planet」にインスパイアをうけたことがはじまりです。
そもそも「Night on the Planet」とは、1991年公開の映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』に由来しています。この映画は、5都市で繰り広げられる女性タクシードライバーと乗客のストーリーです。
「ちょっと思い出しただけ」の葉も女性タクシードライバーですから、そこは共通点といえます。また、『ナイト・オン・ザ・プラネット』のロサンゼルス編における、ドライバー役のウィノナ・ライダーと乗客ジーナ・ローランズのやり取りは、目立ってオマージュされていました。照生と葉が真似していた整備工の話以外にも、タクシーのドアを閉めようとして足を挟みかける
サンバイザーにラッキーストライク、耳にタバコをかける、葉が女性に仕事に誘われるシーン など、小さいオマージュが散りばめられて、作品を見ている人はさらに楽しめるものになっていました!照生と葉のお気に入りの映画として『ナイト・オン・ザ・プラネット』を鑑賞するシーンもあり、2人でタクシードライブをする際には、映画の台詞を真似てふざけ合う姿もえがかれています。相違点としては、「ナイト・オン・ザ・プラネット」は、5都市で、同時刻に起こったそれぞれのストーリーなのに対し、「ちょっと思い出しただけ」は、照生と葉のストーリーが、徐々にさかのぼられていくというところです。
2021年の7月26日から、一年ずつ遡っていくわけですが、「何年の7月26日なのか」が示されないため、そこが少しわかりにくいと感じた方もいるのではないでしょうか?ちなみに松居監督曰く、あえて年号を入れていないそうです。
個人的な感想としては、照生と葉の会話のひとうひとつが、どこかおかしくて、懐かしくて、まさに爆エモでした!
現在から、徐々に昔に遡っていく内容ですが、2人だけでなく、まわりの人や、「マスク」でえがかれる社会情勢などにも注目です。
記念日や誕生日に、ふと昔の恋人を思い出す…誰しも経験したことのあるような、切ないながらも、どこかうれしいような、何とも言えない気持ちを表してくれている映画です。
ラストでは、葉が居酒屋の前で康太(ニューヨーク屋敷さん)と出会い、結婚して子供がいることが分かるのでした。
康太は照生とは対照的に、堂々と葉に言葉で「絶対一生幸せにします」と伝えることができる人でした。葉と康太の付き合い始めを想像させる出会いのシーンはとても自然なんですよね…!
ジム・ジャームッシュ監督の『ナイト・オン・ザ・プラネット』からインスパイアされて生まれた、クリープハイプの楽曲「ナイトオンザプラネット」。
尾崎世界観さんは、この映画をオールタイム・ベストに挙げるほど思い入れが深い映画だと語っています。
映画の内容は「ナイトオンザプラネット」の歌詞に非常に寄り添った内容になっています。1番は男性視点で、2番は女性視点で描かれています。
ナイトオンザプラネット額縁に入れたポスター
窓のそばの花のとなりに飾ってた
吹き替えよりも字幕で 二人で観たあの映画
クリープハイプ「ナイトオンザプラネット」
映画の中でも、「吹き替えよりも字幕がいい」と照生が話していました。
ブラは外すけどアレは付けるから全部預けて
空は飛べないけどアレは飛べる
愛とヘイトバイト 明日もう休もう 二人で一緒にいたい
一方で、2番は対照的に女性目線の歌詞になっています。
あの頃と引き換えに
字幕より吹き替えで
命より大切な子供とアニメを観る
いつのまにかママになってた
切なくも素晴らしい歌詞!
映画のラスト、葉が居酒屋の前で出会った康太と結婚して子供もいることが分かるシーンに通じますね。
そして、後半の歌詞につながっていきます。
久しぶりに観てみたけどなんか違って、それでちょっと思い出しただけ。
あの頃に観た映画と、時間も経過し環境も変わった今では、なんか印象が違ってみえる。考えてみれば、映画のラストも同じ構造になっていましたね。
ありがとうございました!
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