押し入れから出してきたVHSテープの表面に、白っぽい粉のようなものや、斑点のようなものが付いている。そんな経験をしたことはないでしょうか。この記事では、それがカビかもしれないテープを見つけたときに、そのまま再生してよいのか、どう扱えばよいのかを整理しました。

1. まず結論から

先に結論を言うと、白っぽい粉状のものや斑点が見えるテープは、普段どおりの感覚でデッキに入れて再生するのはおすすめしません。理由は後述しますが、テープ自体だけでなく、再生に使うデッキ側にも影響が及ぶ可能性があるためです。「見た目が気になるけれど、とりあえず再生してみよう」という判断は、避けたほうが無難です。

2. カビらしきものの見た目

テープにカビが生えている場合、次のような見た目になっていることが多いです。

こうした状態が見られる場合、カビの可能性を疑ったほうがよいと考えられます。ただし、次の項目で説明するように、見た目だけで断定するのは実は難しいという点も知っておいてください。

3. それは本当にカビとは限らない

ここが少し分かりにくいところですが、テープに見られる白っぽい粉状のものは、必ずしもすべてがカビとは限りません。テープの内部には、映像・音声の情報を記録するための磁性体を、テープの土台に固定するための結合剤(バインダー)が使われています。このバインダーは経年劣化によって加水分解し、粉状の物質やベタつきが表面に出てくることがあります。

つまり、見た目が似ていても「カビによるもの」と「バインダーの劣化によるもの」の両方が考えられ、素人目には判別が難しいのが実情です。どちらであっても対処の考え方は共通していて、「見た目が気になるまま、普段どおりに再生しない」という点に変わりはありません。

4. なぜ無理に再生してはいけないのか

見た目が気になるテープを、普段どおりの感覚でデッキに入れて再生することをおすすめしない理由は、主に2つあります。

1つ目は、デッキ側への影響です。カビの粒子や劣化した結合剤が、デッキ内部のヘッドやテープを送るローラーに付着すると、デッキ自体の調子が悪くなることがあります。デッキの調子が悪くなった状態のまま、別の正常なテープを再生すると、そちらのテープにまでトラブルが及ぶ可能性があります。

2つ目は、テープ自体への影響です。劣化して脆くなっているテープを、通常の速度・力で送り出そうとすると、テープが切れたり、デッキ内部に巻き込まれたりするリスクが通常より高くなります。一度切れてしまったテープは、修復できる場合とできない場合があり、状態によっては映像の一部が失われてしまう可能性もあります。

5. カビ以外にも気をつけたい劣化のサイン

カビらしき見た目以外にも、次のような状態が見られる場合は注意が必要です。

これらも、無理に触ったり引っ張ったりせず、状態を確認する程度にとどめておくのが安全です。特に癒着は、無理に剥がそうとするとテープの表面を傷めてしまうことがあるため、自分で引き剥がそうとせず、そのままの状態で保管しておくことをおすすめします。

6. やらないほうがいい自己流の対処

カビらしきものを見つけたとき、インターネット上ではさまざまな対処法が紹介されていることがあります。例えば、テープを取り出して布で拭く、ドライヤーで乾かす、アルコールで拭き取る、といった方法です。

こうした方法は、テープの構造や劣化の程度によっては、かえって傷を広げたり、磁性体を剥がしてしまったりする可能性があります。特に「これだけは絶対に失いたくない」というテープについては、思い入れの少ないテープで試すならまだしも、大切な一本にいきなり試すのは避けたほうがよいでしょう。

また、カビらしきものが付着したテープを素手で長時間扱うのも、あまりおすすめしません。手が荒れやすい方や、カビに敏感な方は、作業する際に手袋をする、作業後は手を洗うなど、簡単な対策をしておくと安心です。

7. 見つけたときにできること

カビらしきものを見つけた場合、自分でできる対処としては、次のようなことが挙げられます。

「今すぐ何とかしなければ」と焦る必要はありません。まずは状態を悪化させないことを優先し、対処は落ち着いて検討すれば十分です。

8. 専門業者に相談する目安

次のような場合は、自分で再生を試すよりも、専門業者への相談を検討したほうがよいと考えられます。

専門業者であれば、状態に応じてクリーニングや機材の調整を行いながら再生を試みることができます。それでもテープの状態によっては、データ化ができない場合もあります。依頼する際は、カビや劣化があるテープにどこまで対応してもらえるのか、事前に確認しておくと安心です。この判断基準については、VHSのデータ化を自分でやるか業者に頼むかを整理した記事でも触れています。